585人が本棚に入れています
本棚に追加
二学期が始まった。こたクンの机は開いたまま・・・。
行き帰りはこっそり電柱に印をつけて辿っている。帰る家は雷文のお屋敷。僕は少し髪を切った。でも今は何も言ってくれる人はいない。
「おっ!ゆき、髪切ったのか?」
声がしそうな気がする。東京も暑いけど九州はもっと暑いんだろうな。
あれから電話もしていない。ヘンな事になったからじゃない。
また声を聞くと、会わないと気が済まなくなりそうだから・・・。
こたクンの邪魔になっちゃう。こたクンの机を撫でる。
「雷文、長期休暇なんだってな」
後ろから声がした。中学の時、生徒会に誘ってくれた飯塚クンだ。
「うん」
「アイツがいなくてせいせいする。アイツが学校の品格を損なってるんだ」
「そんなことないよ。高校になってからは真面目だったよ」
「お前、幼馴染だからって贔屓してんのか?」
「贔屓じゃないよ」
贔屓じゃない。こたクンが好きなんだ・・・そう言いだしてしまいそうだ。
飯塚クンは、じっと僕を見ると急に赤くなったり、そっぽ向いたりした。
なんだろう?
「今日一緒に帰らないか?方向一緒だろ。上手いたこ焼きの店があるんだ」
「下校途中の買い食いは禁止だろ」
「硬い事云うなよ。もう生徒会じゃないんだし」
「こたクンよりよっぽど不良じゃないか」
「なんだよ!せっかく誘ってやったのに」
怒って行ってしまった。こたクンの悪口言っておいて・・・自分が校則を破るなんて・・・。数日後、放課後に屋上に呼び出された。
飯塚クンと取り巻きの二人。
「何の用?」
「この前は誘ってやったのに、素直についてくればいいのによ」
「そんな話なら帰るよ。雷文くんの悪口言っといて、自分が校則違反なんておかしいって言っただけだろ」
「生意気!なよなよしてるくせに」
前の僕なら、ただこたクンに頼ってただけだけど、今こたクンはいないし極妻になるって決めたんだもん。負けてたまるか。
「おい、抑えつけろ」
飯塚クンは二人に命令する。
「君たちも恥ずかしくないのか?こんな奴のいいなりになって」
「なんだと!」
飛びかかってきたので後ろに横に身をかわす。
「逃げてばっかりじゃ勝ち目はないぜ」
逃げながらも脱出の道を探しているんだ。身のかわし方は、藤子さんに教わった。どうもどんくさいらしくて、特訓でも舎弟さんたちにやすやすと捕まってしまったけど。
最初のコメントを投稿しよう!