虎太郎の決意

5/13
前へ
/56ページ
次へ
こたクンの口唇が体に痕を刻む。 「色っぽくなって・・・気をつけろよ」 「そんなことないよ」 声が震える、離れちゃいやだ。 「こたクン、いかないで」 こたクンは、いつものように頭をくしゃくしゃっと撫でて優しく笑う。 「髪切ったのか?可愛いよ。まぁ、家で大人しく待ってろ。式は一週間後だ。覚悟しとけ。これだけで済まないからな」 「こたクンの・・・」 「いいよ、俺は・・・とっとく」  こたクンはそういうと部屋から出て行った。 僕は恥ずかしい格好で、美術準備室に取り残された。 校門前に黒塗りのベンツ止まる。 「若、久しぶりの学校はどうですか?」 乗り込むと、第一声に権藤が聞いてきた。 「あんまり変わんねぇ。いや・・・一つ変わったな」 「なんですかい?」 「雪兎のやつ、色っぽくなってやがった」 「雪兎坊っちゃん、頑張ってましたよ。弱音も吐きませんでしたし、若が頑張ってるからって健気でした」 「くそっ!何で毎晩、挨拶に廻らなきゃいけないんだ」 「雪兎坊っちゃんとゆっくりできませんね。あんなに待っていらしゃったのに…」 「色っぽくなりすぎて、バカな男にヤラレそうになってたぞ」 「それはいけませんな」 「外から雪兎の事、見守ってくれるように佐竹に伝えろ」 「はい、かしこまりました」 「ふぅ・・・」 あの雪兎が自分をはじめて欲してくれた。むざむざと据え膳とは・・・それにしても色っぽかった。他の男になにかされてないんだろうか?ヘンな考えだけが頭に浮かぶ。 あと一週間、長いな・・・。 そのまま車内でスーツに着替えて極道になった。 「若の背中の・・・出来はどうですか?」 「まぁ・・・気に入ってる」 「披露の時が待ち遠しいですな」 「雪兎は嫌がるかな・・・いかにもヤクザものだからな」 「坊っちゃんはそんな事云いませんよ。若の身体の心配だけしてました」 「相変わらず、可愛いな」 「まったくです」 「権藤、どういう意味だっ!!」 「若・・・誤解です。そういう意味じゃないです。お仕えするのに値する方だと申し上げたまでです」 「ヘンな気起こしたら、権藤でも許さんぞ」 「承知しております」 雪兎坊っちゃんの事となると、若も見境かないくなるからな。言葉には気をつけないと・・・肝に銘じる権藤だった。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

585人が本棚に入れています
本棚に追加