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こたクンの口唇が体に痕を刻む。
「色っぽくなって・・・気をつけろよ」
「そんなことないよ」
声が震える、離れちゃいやだ。
「こたクン、いかないで」
こたクンは、いつものように頭をくしゃくしゃっと撫でて優しく笑う。
「髪切ったのか?可愛いよ。まぁ、家で大人しく待ってろ。式は一週間後だ。覚悟しとけ。これだけで済まないからな」
「こたクンの・・・」
「いいよ、俺は・・・とっとく」
こたクンはそういうと部屋から出て行った。
僕は恥ずかしい格好で、美術準備室に取り残された。
校門前に黒塗りのベンツ止まる。
「若、久しぶりの学校はどうですか?」
乗り込むと、第一声に権藤が聞いてきた。
「あんまり変わんねぇ。いや・・・一つ変わったな」
「なんですかい?」
「雪兎のやつ、色っぽくなってやがった」
「雪兎坊っちゃん、頑張ってましたよ。弱音も吐きませんでしたし、若が頑張ってるからって健気でした」
「くそっ!何で毎晩、挨拶に廻らなきゃいけないんだ」
「雪兎坊っちゃんとゆっくりできませんね。あんなに待っていらしゃったのに…」
「色っぽくなりすぎて、バカな男にヤラレそうになってたぞ」
「それはいけませんな」
「外から雪兎の事、見守ってくれるように佐竹に伝えろ」
「はい、かしこまりました」
「ふぅ・・・」
あの雪兎が自分をはじめて欲してくれた。むざむざと据え膳とは・・・それにしても色っぽかった。他の男になにかされてないんだろうか?ヘンな考えだけが頭に浮かぶ。
あと一週間、長いな・・・。
そのまま車内でスーツに着替えて極道になった。
「若の背中の・・・出来はどうですか?」
「まぁ・・・気に入ってる」
「披露の時が待ち遠しいですな」
「雪兎は嫌がるかな・・・いかにもヤクザものだからな」
「坊っちゃんはそんな事云いませんよ。若の身体の心配だけしてました」
「相変わらず、可愛いな」
「まったくです」
「権藤、どういう意味だっ!!」
「若・・・誤解です。そういう意味じゃないです。お仕えするのに値する方だと申し上げたまでです」
「ヘンな気起こしたら、権藤でも許さんぞ」
「承知しております」
雪兎坊っちゃんの事となると、若も見境かないくなるからな。言葉には気をつけないと・・・肝に銘じる権藤だった。
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