花嫁修業

2/13
前へ
/56ページ
次へ
僕、稲葉雪兎は、聖城学園高校二年生。部活は帰宅部。 大学進学コースに入っているので、授業についていくのがやっと・・・。 今は夏休み・・・こたクンは7月の終わりに修行に出たきり・・・帰ってこない。 結局、『最後までいいよ・・・』って言ったけど、僕らは結ばれてはいない。 もちろん僕だって怖い。 僕も男だし・・・男の人を受けいれる様には出来てないんだから。 でも、こたクンならイイと思った。だって、僕はこたクンが好きなんだもん。こたクンが望む事は叶えてあげたいし・・・。 こたクンの事を思い出すと、どう触れられたか躰が思い出す・・・ズキズキする・・・ヘンになる。こたクン、会いたい・・・触れられたい。 なのに・・・こたクンの手の感触が思い出されて身体の芯が熱くなる。 こたクン、早く帰ってきて・・・そうじゃないと自分でヘンなこと・・・しそうで怖い。 お盆は、山梨のおばあちゃんの所に行く。婚約を報告する為だ。 おばあちゃんも、昔は極妻だったらしいと聞いて、話を聞いてきた方がいいと思ったのだ。 それに10月の式には、おばあちゃんも出てほしい。僕の花嫁姿を見てほしい。招待状も持ってきた。 そう、僕は花嫁なんだ。女装するのかな? あと、機嫌の悪いお母さんと二人でいるのも、気まずい。 お盆休み初日から山梨に行く事にした。 おばあちゃんは駅に迎えに来てくれた。方向音痴な為、東京駅まではお母さんが、山梨ではおばあちゃんがいてくれる。相変わらず人任せのダメな僕。 「おばあちゃん、こんにちは」 「よく来たね、雪兎、背伸びたね」 「そう?学校では小さい方だから」 「まぁ、冴子も大きい方じゃないからね。遺伝だよ」 「もう少し大きかったら・・・カッコイイのになぁ~。ほんとに山梨の家は静かだね」 「まぁ、田舎だからね。今日取ってきた西瓜、食べるかい?」 「うん」 二人きりなのに、食べきれないくらい大きな西瓜。切っても大きい1切れを頬張りながらおずおずと切り出してみる。 「おばあちゃん、お話があって来たんだけど」 「なんだい?」 「あの・・・僕、10月に結婚するんだ」 「結婚?雪兎がか?」 「うん」
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

585人が本棚に入れています
本棚に追加