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「まだ高校生じゃないか。まさか、女の子を妊娠させちまったのかい?」
生々しいな・・・苦笑いしながら
「いや、相手は幼馴染の男の子」
「男?あんたそっちの趣味なのか?」
「そう言われると・・・自信は無い。でも僕もその子の事好きだったから・・・嫁さんに欲しいって、家に挨拶に来て・・・」
「利一君も冴子も承諾したんか?」
「仕方なくね」
「そうか・・・なんでまた男と・・・」
「考えられないかもしれないけど・・・これ結婚式の招待状。全部、向こうが仕切ってるから」
白い封筒を渡すとおばあちゃんの顔色が一変した。
「ダメだ」
「どうしたの?」
「ヤクザか?」
「どうして分かったの?」
「雷文組はダメだ」
「おばあちゃん、雷文組、知ってるの?」
「よりによって雷文とは・・・おばあちゃん9月になったら行くから、10月まで逗留するって冴子に言っておいてね」
「おばあちゃんは僕とこたクンの結婚に反対?」
「ああ、反対だね」
「そうか・・・」
これじゃあ、姐さんの事もきけなくなっちゃった。
昔、おじいちゃんと雷文組で抗争とか・・・あったりしたのかな?お母さんはそれを知っているのかな?
「雷文虎太郎ってどんな子だい?」
「イイ子だよ。僕には優しい。昔は暴れん坊とか言われてたけど、暴力を振るうのがいつも僕のせいだったりする。いつも守ってくれてた」
「今の姐さんは?」
「雷文藤子さん、お母さんと一緒に暴走族してたんだって。今は立派な姐さんだよ」
「そうかい」
いつものおばあちゃんと違った。一瞬で姐さんになったような。
昔の片鱗ってやつかな?ただの家庭菜園をやってる田舎のおばちゃんではない表情を、初めて見た。
一週間の田舎生活を経て、東京に帰ってきた。明日は結納の式が行われる。
おばあちゃんに反対された。
あの後、極妻だったおばあちゃんの話もきけずじまい。9月に反対しに東京に来るのかな・・・?
前途多難・・・こたクンの言っていた通りだ。
「大丈夫だ。俺がなんとかする」
こたクンの声が聞こえたような気がした。
頼ってばかりじゃ駄目だ。こたクンばかりに大変なことさせてはいけない。僕が支えなきゃ!
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