花嫁修業

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お盆が明けて、暑い日だった。こたクンはいないのに結納式が執り行われた。 場所は僕の家。 こたクンのおうちと違って、普通の一軒家に、熱いのに黒スーツの強面のお兄さんたちが、5人もやってきた。 家に次々に品物を運ぶ。恭しく運ばれた漆塗りに蒔絵が施された美しい箱が3つ。 箱にはそれぞれ、のし・末廣・結納金・寿留女・子生婦・友白髪・家内喜多留・勝男武士・婚約指輪・目録が入っている。 初めて見た・・・今でもこんなことしている家があるんだぁ。 箱は横に並べられ家族三人の前で箱が開かれる。 仲人となる龍仁会系石原組の組長さんが口上を述べる。 「この度は雷文虎太郎様と稲葉雪兎様のご縁が相整いまして、おめでとうございます。未熟ではございますが、ご両家の良縁の仲立ちをさせていただきます」 両方が深々と頭を下げる。頭を上げると 「本日は吉日でございますので、婚約の印として雷文虎太郎様より結納品を持参致しました。幾久しくお納めください」 お父さんの稲葉利一が、目録を舎弟さんから受け取り品物を確認する。 お父さんは一礼して 「確認しました。幾久しくお受け致します」 顔が引きつっている・・・緊張しているんだな。お喋りなお母さんも今日は静かだ。 「結納の受書と、心ばかりの結納のお返しの品でございます。雷文虎太郎様へよろしくお届けください」 セリフは座布団の下に隠したってどうみても棒読みだ。 「かしこまりました。ご結納のお返しのお品、確かにお預かり致します。これより雷文虎太郎様にお届けに参ります」 こうして石原組の組長さんと舎弟さんたちが帰っていった。 「はぁぁぁ~~肩が凝るわね」 「こんなしきたりがあるなんて・・・勉強になるよ」 お父さん、この状況で感想はそれ? 「もう一回来るんだよな」 「そうよ・・・隣だから早いわよ」
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