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確かに30分後には帰って来た。また家族三人が並ぶ中、石原組組長は
「結納の受書でございます。幾久しくお納めください」
「確認いたしました。幾久しくお受け致します」
とお父さんが言うと。組長さんが高らかに宣言する。
「これにより、滞りなくおふたりの婚約が成立致しました。おめでとうございました」
こうして当のこたクンがいないまま婚約は成立した。僕は正式にこたクンのフィアンセになった。何か実感わかない。
幼稚園の時みたいに女装するのかな?女装は嫌いじゃないけど・・・。
日暮らしが泣き始めた・・・もうすぐ新学期。
明日から藤子さんのところで姐さん修行をする。
泊まり込みで二週間、雷文組で過ごす。あの迷路のようなお屋敷で迷子にならないかな?僕の心配は、そんなところにあった。
玄関をくぐると、権藤さんと佐竹さんが待ち構ええていた。
「雪兎坊っちゃん、いらっしゃいませ」
「坊っちゃんじゃないよ、こたクンに笑われる」
「そうですね、次期姐さんですし」
「雪兎さん、こちらへ」
奥の部屋に通される。
二階への階段を通り過ぎる・・・こたクンの部屋を通り過ぎちゃう。
「あっ・・・こたクンの部屋じゃないの?」
「二階は若のお帰りまでに改装致します。ブチ抜きで部屋が大きくなりますので・・・」
「じゃあこたクンのベッドは?」
「処分します」
「じゃあ・・・こたクンの枕、僕にちょうだい。そうしたら眠れる」
「わかりました」
奥の間は、広い畳の部屋。縁側から権藤さんが声をかける。
「雪兎さんをお連れしました」
「通せ」
「はい」
組長さんの声・・・初めて聞いた。会うのも初めてかも。
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