花嫁修業

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襖が開いて、権藤さんが「こちらに」という。 正面の掛け軸の前に鋭い眼光、一目で極道だと分かる威圧感。ものすごいオーラの人が、上座に腕組みして座っていた。 着流しに肩から羽織を掛けている。 「稲葉雪兎です。虎太郎さんと無事、結納をする事が出来まして、ありがとうございます」 自分で何を言っているかわからないほど、緊張した。 「よく来たな。堅気の君に辛い事も多いだろうが、虎太郎を頼む」 「はい」 組長さんは、男の僕を受け入れて下さるのだろうか。 「あの・・・」 「なんだ?」 「組長さんは、こたクンのお嫁さんが僕でも、いいんですか?」 ぎょっとする権藤さん、笑いをこらえる佐竹さん。 「会って早々、質問か?キモの座った子だ」 近づいてきてぐっと顎を上げた。 「雪兎と呼ぼうか。許しちゃあいねぇよ。ただアイツが勝手に押し切っただけだ」 「こたクンが?」 「脅しをかけてきた・・・あいつは俺より冷酷かも知れんぞ」 「脅し?こたクンが?そんなことないです。こたクンは、誰よりも組長さんの事、尊敬してます」 「その俺よりも、お前の方を取ったんだ。確かに女にしたらイイ女かも知れが・・・男だしな・・・」 「男なのは・・・申し訳ないです。子供も産めませんし。でも・・・こたクンは、それでもイイって言ってくれてます」 「俺が怖くないのか?」 「緊張はしています。でも、僕に理由も無く危害を加える方ではないと思うので」 「虎の親子は、喰うか喰われるかだ。俺を殺る時は、しっかり虎太郎の側にいろ」 「絶対そんなことしません」 「可愛い子だな・・・アイツも見る目がありそうだ」 そういうと襖を開けて出て行ってしまった。こたクンと組長さんは争うことになるのだろうか?
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