花嫁修業

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「雪兎さん、冷や冷やしましたよ」 「権藤さん」 「ホント肝っ玉が座った方だ。あの組長相手に言い合いをするなんて」 「佐竹さんも・・・」 そんなに怖い人だと思わなかったんだけどな? そのまま権藤さんと佐竹さんに連れられて藤子さんの所に連れてこられた。 「後は姐さんに教わって下さい。呼べばすぐ来ますので」 「うん、ありがとう二人とも」 二人は深々と頭を垂れて部屋から出ていく。藤子さんと二人きりになった。 「よりによって、雪兎とはね~」 「すいません」 藤子さんには、小さい時からよくしてもらったし、可愛がってもらった。 お母さんとは仲が悪いけど、親しみの裏返しだと解釈していた。 でも、可愛いお嫁さんが良かっただろうにとは思う。隣の、幼馴染の男の子を姐さんとして教育しなければならないとは・・・藤子さんの複雑な気持ちも分かる。 「虎太郎は言ったら聞かないから・・・やっぱりアンタしかいないかもね。ビシビシ鍛えるわよ」 「はい」 「まず、着物の着付けから」 「あの・・・藤子さん」 「姐さんと呼びなさい」 「あっ・・・はい。姐さん、僕は女装するんですか?」 「雪兎なら似合うとは思うけど・・・でも両方教えておくわ。まず着物の選び方から。今日は、贔屓にしている呉服屋を呼んでいるから、着物の選び方を教えるわ。ついでに虎太郎と雪兎の・・・雪兎は姐さん用と普通の男モノをしつらえましょう」 「いや、でも・・・・悪いです」 「アンタはここの家の嫁なのよ。ドンと構えてらっしゃい」 「はい」 銀座から呉服屋さんが次の間に呼ばれていて、次から次へと反物を拡げていく。 すごい・・・いっぺんに買うの?値段・・・これゼロいくつあんの? びっくりした。これ買うのか? 「雪兎、着物の選び方はね季節、着る人間の個性、織の良さ、柄の良さ・・・見極めていかなきゃならないの。駿河屋さんのものはいいものだから品質は間違いないわ」 「ありがとうございます」 「私のと、主人の、息子のと、この子のを作りたいの」 「承知いたしました。まずは奥さまのですね。夏は絽の着物なので、地味なものが多いのですが、奥さまは華やかでいらっしゃるから、落ち着いた中にも少し細工があるものがいいですね」 「そうね、そんなのあるの?」 「こちらなどはどうでしょう」 「それもいいわね。雪兎はどう思う?」
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