第1話

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いくら勉強をしていたって、いくら習い事をしていたって、社会がどういうもなのかわからなければ何の意味もない。 世の中に、溶け込めない。 今まで屋敷で過ごしてきた時間が、とても無駄なものに思えてならなかった。 暖かさといい、揺れ具合といい、睡魔が襲ってくるのにそう時間はかからなかった。 ハッとして顔を上げると、乗客たちが皆降りていく。 やだ、ここどこ!? 慌てて自分も電車から降りた。そしてホームの看板を見上げた。 着いたそこはすでに千葉。 よかった。ちょうど終点だったのかな。 ホッとしながら足を運び、改札口から出ていった。 初めて降り立った千葉駅に少し緊張しながら駅前大通りを進み、目に入ってきたホテルルートインを見つけ、そこで体を休めることにした。 が、ここでも世の中の洗礼を浴びる。 宿泊するのに、名前や住所を記入しなければならないなんて…。 私がここに来た証拠が残っては、絶対まずい。 そう思い、すぐにホテルを後にした。 仕方ない、それならば、いっそここに定着してアパートでも借りてしまえばいいのでは? 人に尋ねながら近くにあった不動産へ行ってみたが、そこでも結果は同じだった。 名前、年齢、住所、電話番号等。 社会とは、身分を証明できるものがなければこんなにも身動きとれないのかと驚かされることばかり。 途方に暮れてしまった。 少しずつ日は傾き、風が冷たく感じてくる。 歩き続けていると、目に入ったのはコンビニ。 お腹が空いたため、おにぎりと暖かいお茶、のど飴を手にしてレジへ持っていく。 お金を出そうと背負っていたバックから茶封筒を取り出した。 そこから1万円を出し、お釣りをもらう。 お札だけを再び茶封筒に戻し、小銭と一緒にそのままカーディガンのポケットへしまった。 買ったものを受け取り、コンビニを後にする。 どこかに腰かけてみようかと思っていると、すれ違い様に人と思いっきりぶつかってしまった。 「あっ、ごめんなさい!」 慌てて謝り、前に向き直ろうとして再び人にぶつかる。 「あっ、…ご、ごめんなさい!」 もう、私ってば最悪…。 どれだけ道を歩くことに慣れていないんだろう…。 泣きそうになりながらも、足を止めることはせず、座れる場所を探した。 冷たい風から手を守ろうと、カーディガンのポケットへ手を入れたそのとき。 「…え?」
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