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またも自分の部屋へ戻ると、椅子に腰かけ、デスクに肘をついては顔を両手で覆った。
高ぶる感情を何とか静めようと、息を整える。
フゥゥッと大きく一息ついて、両手を下げた。
そして、一番下にあるデスクの引き出しを開け、中から手帳を取り出す。
紐を挟んでいたページを開き、それをしばらく見つめた。
…私は、このままお母さんのような人形になんて絶対ならないんだから。
回りの子達は私を見て、いつも口を揃えてた。
『柚花ちゃんって、お嬢様なんでしょ?いいねぇ』
『お金持ちたがら、不自由ない暮らししてるんだってさ』
その言葉を耳にするたび、叫びたくてたまらなかった。
良いことなんて何一つない。自由なんてない。
学生のころは授業を終えた後にいくつも掛け持ちして習い事を、高校を卒業しては呉服屋を継ぐことがさらに本格化になり、習い事に加え呉服の勉強が増える日々。
友達と遊んだなんて記憶、これっぽっちもない。
回りは世話役で固められ、身動きなんてとれやしない。
小学生のとき、毎日の生活が嫌になり何度か家を抜け出そうとした。
もちろん簡単に見つかっては、ひどく怒られたりした。
でもそれを、無駄足なんかで終わらせたりしないんだから。
子供心にも、きちんと学んでる。
次にやるときは失敗なんてしない。長年の計画を、絶対成功させてみせる。
自由を手にいれるため、誰にも邪魔させないんだから。
私は手帳のカレンダーのページを開き、日程を確認した。
そして、力強く手帳を握りしめていた。
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