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【死神】
それは突然現れ、現れた場所に居た一人~数人を殺す存在。これと遭遇したら命は無いと思え。
以上。ナルミヤ学院、学院長の言葉。魔法の教科書二頁から抜粋。
日が沈む。空がオレンジ色に染まり黄昏の時が来る。夕食の匂いが漂い始め小さい少年少女は自宅へと元気に走る。
日が落ちた。空は薄暗くなり、青い月が自己主張を始め大地を月明が照らす。
広場があった。子供が元気に走り回り、その親同士が世間話をよくする場所。広場の隅っこには幾つかベンチが置かれている。その、丁度真ん中のベンチを、黒く、黒く、闇よりも黒い漆黒が、月明を拒むように覆っていた。
漆黒に覆われたベンチの傍らに、二人の少女が居た。片方は橙色のショートカット、右側を更に短く結び、活発な印象と、人懐こい印象を持たせる。
もう一人は藍色のうなじ程のポニーテール、藍色の縁の小さな眼鏡を掛け、知的な印象と、眠そうにしている双眸は保護欲を駆り立てる。
「ハサウェイさ~ん。仕事終わったっスよ~。宿帰りましょうよ~」
「……」
全てを飲み込める程の黒に覆われたベンチに、橙色の少女は臆さずに声を掛ける。藍色の少女は何も喋らず、ベンチを覆っている黒を軽く数回叩いた。
すると、ベンチを覆っている黒が奇妙に蠢き、一部が剥がれ落ちて霧散した。霧散したその一部から、骸骨面が覗いていた。
「ありゃりゃ、や~っぱり昼寝してましたか、見付けるのに苦労しないって言っても一言連絡が欲しいっスね」
「寝る子は育つ」
「いやいや。この人もう成長期過ぎてますから、絶対もうそんな年じゃ無いっスっから」
「寝る子は、育つ……っ!」
「あ~…、そうっスね。希望はあるっスよ」
橙色の少女は、自分よりも拳一つ分背の低い藍色の少女の頭を力強く撫でくりまわした。そのせいで乱れた髪を不愉快そうに小さく唸りながら直していく。
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