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結果から言って、芋虫骸骨面と二人の少女が宿を追い出される事は無かった。
息を切らせて宿に辿り着いた橙色の少女を出迎えたのは宿の主人だった。がたいの良い主人は笑顔で二人の少女を出迎え、黒い芋虫を二人に投げ付けた。
両脇に黒い芋虫と藍色の少女を抱えた橙色の少女は困惑した。自分が予想していた反応と全く逆だったのだから無理も無い。
それから数瞬して、漸く阿鼻叫喚ではなく笑顔の主人が自分を出迎えた訳に考えが至り、橙色の少女は全力で愛想笑いをした。それはもう背景に花が咲くほどの笑顔だった。
つまりは宿の主人は三人を追い出す気であり、橙色の少女はそれを悟った訳である。
黒い塊が芋虫運動で突撃して来たのだ、追い出さない理由も無く、その関係者も連帯責任である。
それも仕方がない宿側も妙な噂を立てられたく無いのだ。生計的な意味で。
「ど~するんですかハサウェイさん! このままだとうち等出ていけ宣言されちゃいますよ!」
と橙色の少女は泣きそうに成りながらも小声でこうなった原因である魔獣黒い骸骨面の芋虫に訴えた。
芋虫ハサウェイは「分かった。なんとかする」と言うようにじたばたと暴れ始めた。要は放せと言いたいようだ。
橙色の少女はハサウェイの意を汲み取り、脇下から解放した。解放されたハサウェイは方膝を付いて着地し、すっと立ち上がりもぞもぞと骸骨面以外黒で覆われた物を動かした。
実は宿の主人がハサウェイに臆していたというのは内緒である。
そして黒で覆われた一部が剥がれ落ちて霧散し、そこから黒い握り拳が出てきた。
宿の主人が悲鳴をあげ掛けたのは内緒である。
ハサウェイがその拳を仰向きにして開くと、そこには数個の金塊があった。
結論を言おう。
買収である。
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