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「いや~清々しい程堂々とした買収でしたねハサウェイさん!」
「もにゅもにゅ」
借りた大部屋で三人は寛いでいた。橙色の少女は追い出されなかった事で声を弾ませて上機嫌。藍色の少女はサービスで貰った栗饅頭を黙々と食べている。因みに夕食は焼肉定食だった。
一通り木製の床をみしみし軋ませた後、橙色の少女は落ち着きを取り戻した。
「さて、と。ハサウェイさん。情報交換タイムっスよ」
橙色の少女のその言葉に、大部屋の隅から隅へと転がっていた魔獣転がる黒い骸骨面の芋虫がぴたりと動きを止めた。
「今回うち等が担当する人間の名前はロクス・ラズベイ。年は十七でまだ若いっスね。ナルミヤ学院の二年生。本来の死因は明日の夕方、魔法の研究中での事故死っス。
が、何故か学院に休みを取ってこの田舎町に魔法薬の薬草を採取しに来てるみたいっス。付き添いに一人の女性が居るっスけど、大した問題じゃないっスね。
何時も通り、うち等二人、メリーとうちで人気の無い所まで連れていくっス。ハサウェイさんは出来るだけ寿命に近い時に――ロクス・ラズベイを殺して下さい」
橙色の少女の言葉を最後に、場が静かに空気が冷たく成っていく、さっきまでの熱は無く、ぴりぴりとした緊張を橙色の少女は感じていた。そんな中、魔獣芋虫骸骨面が転がるのを再開した。
静まり返った空気の中、魔獣芋虫骸骨面の転がる音がただ虚しく響き、橙色の少女の肩から力が抜けると共に呆れの感情がふんだんに籠った溜め息を吐き出した。
「割りと張り詰めた空気好きなんですけどね~」
「ドンマイ」
それから暫く、大部屋からはごろごろ転がる音と、少女の乾いた笑い声が聴こえ、数ヶ月宿に人が寄り付かなくなり主人が涙したのは別の話。
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