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「悠里、おはよう」
「おはよう」
彼女は、伊藤美鈴(いとうみすず)。
保育園時代からの幼なじみで、……私の片想いを知ってる、唯一の親友。
「ゆ・う・り」
美鈴がこんな呼び方をする時は、いつだって、何かをたくらんでる時だ。
私は警戒しつつ、返事を返す。
「……何よ」
なんか、嫌な予感がする。
みすずの顔が……ニヤニヤ笑いに変わってくんだもん。
「今日、卒業式だよね♪」
「うん」
ぐふふふふ……
まさに、そんな笑い声が聞こえそうな、美鈴の笑い顔が怖いんだけど……。
「今日こそ、告白するんでしょ!?」
「は?」
「だからぁ、こ・く・は・く。するんでしょ!?」
「はあっ!? 何、何のこと!?」
「とぼけてもダメだかんね。っていうか、あんた、告白もしないで、ずっと片想い続けるつもり?」
「いや……まあ……いつかはって思っているけど……でも……」
「でももくそも無い!! 今日告白しないでどうすんのよ! 卒業しちゃったら、もう大原先生に会う機会なんてなくなっちゃうんだよ。教師と元教え子なんて関係、ハムより薄いんだからね!!」
「ハム……そんなもんと比べられても……。いやいやいや、騙されないよ。美鈴、あんた、誰かと賭けでもしてるんじゃないでしょうね?」
「はあっ!? 私がそんなことするとでも!?」
十分しそうなんですけど……。
「こんなにあんたのことを心配してる私に、なんて仕打ち……っく~っ!!」
そんな、ハンカチ咥えて演技までしなくても。
「だから……告白するでしょ!?」
蛇に睨まれた蛙って……こういう心境なんじゃないかなって、思わず考えてしまう私がいた。
……ここ……通学路……じゃなかったっけ?
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