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「おはようございまーす!」
朝、私達サッカー部は練習を欠かさず、汗を流していた。
「さーきっ!おっはよー!」
「おはよー、菜々!」
主に朝練は自由なので、私達マネージャーは仕事が少ない。
「ねぇねぇ?昨日、何かあった?」
「昨日?」
菜々がニヤニヤして聞いてくるので、私は何の事かと眉を顰めた。
「だぁーかーらっ!光太郎先輩に送ってってもらった時よ!なんかあったって聞いてんの!」
菜々はワクワクした表情で詰め寄ってくる。
「はぁ。別に何もないけど?」
そう言うと、菜々は「ウソでしょ?!なんかあったでしょ!!」とグイグイ質問する。
「別に何もないって・・・何をそんなに期待してるの?」
「あのねぇ・・・先輩はね・・・」
言葉はそこで止まった。菜々はその先をしゃべろうとはせず、私の頭1個分上を見て、硬直していた。
「菜々?何見てるの?」
私は気になって、後ろを振り返った。
「わ。こ、うたろう先輩・・・」
そこにいたのは、清々しい笑顔の光太郎先輩だった。
「ん。菜々ちゃん、ちょっといいかな?」
「はい・・・何でしょう?」
光太郎先輩は、1回私を見てから、菜々に視線を戻した。
「俺、菜々ちゃんに言わなきゃいけないことあるんだよね。」
すると、菜々は即座に反応した。
「な~んでも聞きますよ?先輩。」
「うん・・・俺さ、本気で頑張ろうと思って。一応、それは菜々ちゃんに知ってって欲しいなって。」
すると、菜々は
「そーですか。でも私、先輩だけじゃないですから、協力してんのは。私もそれだけは伝えておきます。」
と、ニヤリと笑った。
「てゆーか、面白くなりそうな方向に向かわせてるだけなんで、私は。そっから先は、先輩達次第なんで。」
そう菜々がしゃべり終わると、光太郎先輩は
「魔性だね、菜々ちゃんは。」
と苦笑いした。
「そーですか?魔性なのは、咲じゃないですか?」
私は、訳分からない話をぼんやり聞いていた時に、私の名前が出てきて、驚いた。
「えっ?私が何?」
反射的にそう言うと、光太郎先輩は真面目な顔をして、
「・・・そうかも。」
と静かに肯定した。
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