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ブンッ!!と、空気を裂く音だけが聞こえた。拳は虚しく空を切り、その向こう側に笑う生徒会長が見えた。
よけられた。それはわかった。けど、
(速ぇな…)
一歩下がっただけだが、全く無駄な挙動を見せなかった。一瞬俺がただ打つのが早かっただけなのかと思っちまったくらいに。
「加減なんてしなくていいですわよ。全力できてください」
しかも、バレてる。
チッ、と舌打ちし、一度真っ直ぐ立つ。
「あとで泣いても知らねぇからな」
「さて、泣くのはどちらでしょうね」
抜かしやがって…。
小さく息を吐き、リラックスする。そんな俺の様子に小首を傾げる生徒会長。
の眼前に、全力で踏み込んだ。
「!?」
一瞬に懐に潜り込まれ、目を見張る生徒会長。その面めがけ、斜め下から左拳を突き上げた。
またもや後ろに下がってかわした会長。しかしさっきのような余裕はなかったように見えた。
再び距離を置こうとする会長。だが、俺はそれを許さない。
ダッシュし、距離を潰し、今度は連続で拳を放つ。全て顔面狙いだ。
会長は信じられないほど機敏な動きで俺のパンチをかわす。さすがに驚く俺だが、まだ終わらない。
顔面めがけて放つ左拳を、会長の眼前で止める。所謂フェイントをしかけた。
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