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まんまと引っかかった会長の動きが一瞬ぎこちなく揺れる。来るはずのパンチが止まり、よけるための挙動を急停止させたんだ。
たまらずニヤリと口元を歪め、体の影に隠していた右拳を一際硬く握る。
それを、一切の加減無しで、全力で会長の腹ど真ん中に叩き込んだ。
ズドォッッ!!!と鈍い音が響く。茅滝の小さな悲鳴と先輩たちのひきつった声が聞こえた。
軽く跳ねるように後退した会長は、ニッコリと笑った顔を上げる。
腹の前で交差させて構えた腕を揉みながら、
「今のは少し胆を冷やしましたわ」
「……読まれてたみたいだな」
「いいえ、確かにフェイントには驚きましたが、お腹への攻撃はあなたが教えてくれました。というか、わざと教えましたね?」
「……はぁ?なんの事だ?」
「ふふっ、やはりわたくしの目は間違ってなかったようですね」
クスクスと笑う会長は、何故かとても嬉しそうにしている。
俺の攻撃はガードされた。というか、させた。
この女は本物だ、先輩らがいうように化け物だ。だから、ガードする事はわかってた。だから全力で打ち込んだんだ。
「あなたの優しさ、本物ですね。その優しさが、わたくしは欲しいのです」
右手を前に差し出し、会長は微笑む。
「わたくしと、一緒に行きましょう?」
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