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「もうすぐ氷嚢(ひょうのう)を持ってきてくれるから、待ってて」
消え入りそうな声で、立花葉波は鏡をガン見する俺にそう言った。
鏡から目を離し、鏡を返そうと顔を向ける。
「つわッ!?」
さっき以上に近い距離にあった立花葉波の顔に驚き、反射的に離れようとして後頭部が掃除用具入れに激突。
後頭部を押さえて悶絶する俺。そんな俺の顔、腫れ上がった左頬に手を添えて、
「じっとして」
なんて言いながら、再び俺に顔を近付けてきた。俺はたまらず、
「ち、近いって!なんでいちいち近付いてくんだよ!?」
「…心配してるから」
「ありがたいけどもうちょい離れてくれ!頼むから!」
つい無意識に声を張り上げ、なんとかこいつに離れてもらうように頼む。
立花葉波は数秒無表情のまま俺を見つめ、やがて、
「……ふ~」
「ふぃあっ!?」
俺の左頬に、息を吹きかけてきた。
「なッ何すんだいきなり!?」
「……冷そうと思って」
「冷えるかそんなモンで!余計な事すんな!」
「…わかった」
納得してくれたようなので、立花葉波から顔を背けて息を吐く。
「………ふ~」
「ずわはっ!!?てててテメェ!!やめろっつってんだろ!!」
「……おもしろい」
「わざと!?タチわるっ!」
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