第1話

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 16歳の誕生日に何を贈ってもらったのか、もう、そんなことは忘れた。   思春期とか、反抗期だ、とか。難しい年頃ね、とか、    そんな言葉は辟易(へきえき)する。    ま、そんな頃もあったものだと、ハルカは高層ビルの屋上のカフェから路上を見下ろし制服姿の高校生が戯れているのを眺めていた。  色々な情景を高層ビルの夕陽の片隅に置き去りにして、ハルカはピンク色の  飲みかけのシンガポールスリングの入った細いタンブラーの縁に唇を寄せる。  薄らとグロスが付いたタンブラーの縁を親指の腹で軽く拭う。    早く来て、と、メールを打てば、男達はそそくさとやってくるだろう。    けれど、ハルカは電話を手に取るのも気だるく、肩にかかる艶の良い髪を撫でて毛先を見るわけでもなく、ただ、グラスに刺した細い透明なストローを丹念にかき混ぜて、青々としたミントの葉を溶け始めた氷の上に浮かべ、弄(もてあそ)んだ。
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