第15話

10/33
前へ
/33ページ
次へ
「さ、山田さんも席に着きなさい。誰だぁ~山田綾さんを虐めたのは? 先生許さないぞぉ~?」 慌てて席に着いた生徒達は、真正面を向き姿勢を正した。それは、いつもと同じ光景だった。 だが皆、一瞬、不思議に思ったはずだ。虐めを見逃し、煽っていたのは猿田だったのだから。 猿田は机と机の間を通り、生徒達1人、1人の顔を見つめ威圧をかけている。 私はビクビクしながら、悪魔が教室を歩き回るのを眺めていた。 「今のうちだよぉ~告白するのはぁ。これから先生、虐めってやつを徹底的に打ちのめそうかと思ってるんだよぉ~ 良くないだろ? そういうの。ニュースでも、流れるよねぇ……虐めの末、自殺。そんな事件を、この教室から起こすわけには、いかないんだよぉねぇ~」  動き回る度に、耳毛が分身のようにフワフワと悪臭を撒き散らす。 生徒達は口を押さえ、下を向き始めた。 「ここだ、ここから原因が臭うぞ!」 秋山たかしの席の横に、猿田は足を止め、両手でバンッと机を叩いた。 「君は山田君を、たぁーくさん虐めてるそうだね? 朝のホームルームから、こんな議題、嫌だと思わなぁーい? 先生ウンザリだよぉー」 顔を近づける猿田に、思わず秋山は両手で口を鼻を塞いだ。その態度に、悪魔のこめかみがピクリと動く。 「秋山たかし君? 答えなさいよ! えっ!」 再度机をバンっと叩き、睨みを利かせ、すごんで見せた。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加