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中華のスープの肉団子を、スプーンでじれったく転がした。
「綾、それ食べないの? じゃあ、いただきぃー!」
「あ!」
るいは、肉団子を掬い上げ、口にパクリと放り込んだ。
「うめぇ~! 綾、好き嫌い多いの?」
「ち、違うわよ! 食べれるわよ……」
いつも、るいのペースに巻き込まれる。このまま、甘えてしまおうか?
でも……気兼ねなく、こうしていたかったのに。
「5時間目、うちのクラスがプール開きだな。綾の水着姿見たいんだけど、やっぱ今年もさぼり?」
「な、なんてことを言うのよ! ……入らないけどね」
泳ぐのは不得意だった。プールだけでも憂鬱だったのに、水の中で攻撃されたら、耐えられそうになかったからだ。
「猿田が担任になってからは、入らないもんな? ふふっ。ちょっとだけ、空が曇ってきたなぁー、寒いのかな」
プールの日は、いつも雨が降ればいいなーと思っていた。あの消毒臭い匂いも苦手だった。
「大雨になれば良いのに……るい、あのさぁ……猿田がいる前では話掛けないで。迷惑がかかるから」
虐めがなくなっても、まだまだ暗い気持ちは続いた。いつになれば晴れるんだろう。
「まだそんなことを言っているの? 分かったよ、うまくやるから。トレー貸して、俺が片付けてあげる」
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