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「……ありがとう」
両手で持ち上げ、るいの前に差し出した。片手で軽々と受け取り、笑顔を向けた。
――やっぱりるいは美少年だね。あの笑顔で惑わされてしまう……。
ふと、粘りつくような視線を感じ、辺りを見渡すと、クラスメイトの女子も男子も、こちらを注意深く監視していた。特に秋山は眼光を鋭くし、いつものように、パンをこちらに投げつけそうな目だった。
思わず、その怖い視線から逸らした。
――大丈夫、大丈夫よ、もう傷つけられることはないんだから……。
怖くない。卒業するまでの我慢よ。
「山田綾」
その声に振り向くと、神谷君が背後に立っていた。
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