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「少しだけ、僕の話を聞いて……そのまま前を向いていて」
神谷はしゃがみ、小声で私に語りかけた。
「ど、どうしたの神谷君?」
「君を好きで襲ったんじゃないんだ。あの時はごめん……るいには気をつけた方が良いよ……僕はるいを親友だと思っているけど、怖い一面も持ってるんだ。きっとたえら……」
「おい! なにこそこそ、隠れてんだぁー神谷? 綾に文句でもあるのか!? え!」
食器を片付けたるいが戻り、神谷の気配に気づいたようだ。
「ち、違うよ。綺麗な綾さんの背中に、ちょっと大きめな糸くずが付いていたから……」
2人は普段から仲が良いはずなのに、神谷君を睨むるいは、厳しい表情だった。
「るい、本当よ。糸くずを取るよって……それだけよ? 怒るなんて変よ?」
おかしな空気が辺りを漂う。慌てて取り繕った。
「そう。それなら良いんだけど」
私には笑顔を向けた、るい。でもなんだかいつもと違った。なにがと、聞かれれば答えられないけど、勘と似た類いのモノだった。
「るい、邪魔をしてごめんね。僕、もう行くから」
苦笑いの神谷は、慌ててこの場から立ち去ろうとした。
「神谷、今日も一緒に帰ろうな」
「……分かったよ」
――2人は本当に仲が良いの?
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