16人が本棚に入れています
本棚に追加
猿田は背中へ手の平を置き、クルクルと回転させた。気持ち悪い体温が伝わってくる。体の距離が近く、まるで私の半身を預けてしまってるかのようだった。
見上げると、横顔からは、ニョキッと出っ張った黄ばんだ歯がハッキリと見えた。突き出た歯の口臭が、鼻を刺激し、吐き気がする。
「りんさんには、先生の気持ちをまだ言うなよ?」
「分かっています……今日、夜ご飯でも食べに来たらどうですか? お父さんと最近、喧嘩ばかりだし、良いと思いますよ」
背中の手が軽く押し出し、陰る教室へと誘導した。
「ふぅ~ん。そうなんだぁー仲悪いとは好都合だね。で、なんで揉めてるわけぇ? そうそう、これからは靴や、上履きを汚されたら言いなさい。先生がやり返してあげるから。くくくっ……」
この人をどこまで信用して良いのだろう。私は、一体どうなってしまうんだろう……。
後悔の感情が、咄嗟に過ぎっては打ち消した。
――もう戻れない。闇の扉は開かれたんだから。
「りんさんは、お父さんが浮気してるんじゃないかって疑っているの。結局は、お互い様のような感じで、昨日は喧嘩になったわ」
「へぇ~、君のお父さん、お盛んなんだねぇ? そいつは、りんさんが可哀想だ。先生が慰めてあげなくっちゃねぇ……くくくっ。面白そうな問題だねぇ~。ちょっと、調べてみるかな」
悪魔の笑いは高々と、2人っきりの教室に響いた。
「先生は、山田家のお父さんの地位がとぉーても欲しいんだよ。なんせ、ハーレム状態だからな。羨ましいよ~今日の夜は、少しだけその序章を楽しめるんだね」
最初のコメントを投稿しよう!