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「そうだ。褒美があるからこそ、働く威力が湧くってもんだ! そうだなぁ~まだ、先生なにもしていないから、ほっぺにちゅーはどうだい? それくらい、お安い御用だろ? 簡単な報酬だろーに」
「きょ、教室で?」
「ああ。早く、早く!」
猿田は薄汚いほっぺたを、こちらに身を屈め、差し出した。
――どうしよう……頬とはいえ、凄く気色が悪い。あの悪臭を我慢して、キスをしろというの? 無理よ、無理! でも、しなければ私はあの力を貰えない……。
覚悟を決め、目を瞑り、ゆっくりと唇を突き出し、頬へと近づけた。
「なにしてんだ! 綾!」
「るい!?」
――君のお気に入りの、るい君も容赦しないからね。
猿田は、私にだけ聞こえるようにボソリと呟いた。
「やあ! 並木るい君、おはよう!
山田さん、先生は職員室へ行くからね。悩み事があったら、すぐに言うんだよ?」
肩をぽんぽんっと叩き、るいを睨み付け、教室を出て行った。
――助かった……味方のはずだけど、やっぱり怖い。
「お前何してんの!? 猿田を受け入れたのか?」
「違うわ、相談していただけ。貴方には関係ないでしょう! もう私に一切関わらないで!」
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