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「なんでそんなことを言うんだよ! 俺の気持ち分かってんだろ!?」
るいが手首を握り締める。ギリギリと力が食い込み、痛みが走る。だけど、こんな苦痛よりも、心の傷のほうが大きかった。
「貴方じゃ、私を守れないわ……もう関わらないで」
暗く俯き、小さく呟いた。この言葉は、きっとるいを傷つける。
でも言わなければ、猿田からもっと深い傷を、負わされることになる。それは出切れば、避けたかった。
「おい。貴様ら、朝からなにいちゃついてんだよ? 曜子が可哀相だと思わないのかよ? るいが好きだったんだぜ?」
教室に踏み入れた秋山たかしは、虫けらを見るような眼で視線を飛ばした。
「それは個人の気持ちだろ? 亡くなったのは同情するが」
「ふざけんな! 俺は絶対にお前らを許さないからな! なんだって、こんな男を好きになったんだ……俺を愛してくれれば幸せでいられたのに」
「言い掛かりは、止めてくれ! たかしだって、俺の気持ちは気づいてたはずだろう?」
たかしは、歯をギリギリと歪ませ、るいを凝視した。
「おはよう! たかし、るい! なに、ばい菌と戯れてんの?」
――麻美……。
振り返ると、いつの間にか生徒達がチラホラと登校し、席に着いていた。
「るい、バイ菌と一緒にいるのはよして、早くあーちゃんと席に着きましょう?」
るいの腕を引っ張る上田晶子は、上目使いで訴えた。
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