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俺が偶然先輩の秘密を見てしまった時間…今から約一時間前に戻ろう。
場所は体育館裏。俺がなんでそこに行ったかっていうと、ただ単に体育館裏すぐそばの西門から出た方が家に近いからだ。
俺はそこで、先輩が女生徒と抱き合っているのを見てしまった。正直俺は、驚きを通り越して呆然としていたと思う。
しかもちょうど、そのお相手の背中と先輩の顔が見える位置だった。先輩の一瞬見開いた目と目が合う。俺は蛇に睨まれた蛙よろしく、その場に固まっていた。
先輩は、抱き合っていた女生徒をそつなく言いくるめてその場から離れさせる。そして視界から女生徒が消えた瞬間に顔を険しくしつつ、素早く俺の胸倉を掴んで、こう言った。
「…今からアンタにご飯奢ってあげる。だから、このことは誰にも言わないで頂戴」
俺は奢りには弱い人間なのだ…いや別に他言する気はなかったけどさ。そんなこと言ったら先輩のファンに殺されるし。
以上、回想終わり。ついでに俺の夕飯も終わり。
「ごちそうさまでした」
「ホント、よく食べたわね。まあ、これで誰にも言わないなら安いものね」
「言いませんから。それじゃあ、奢っていただいてありがとうございました」
俺は先輩にお礼を言って、すぐにその場を立ち去った。万が一にでも先輩と一緒にいたことを知り合いにでも見られたら、明日学校で吊し上げをくらうに決まってる。
…これは俺の想像でしかないんだが、もしかしたら先輩はお相手の女生徒のために口止めをしたんじゃないだろうか。
うん、それなら辻褄も合いそうだ。あのなんでも許されそうな先輩が、わざわざ口止めするような話でもないはず。だが、お相手の女生徒はどうだろう?
多分先輩のファンからかなりのバッシングを受けるんじゃないだろうか。先輩誰にでも好かれるし、憧れの的だし。そういうことなら、先輩は気遣うんだろうな。
「…ま、推測でしかないけど。証拠も何もなく」
俺は黙ってるのが吉だな。
後日。
「……えーと…」
「………………」
体育館裏で再び先輩と再開した。お相手の女生徒と何をしていたかは…言わないでおく。
「…今度は、ファミレスがいいかしら?」
すいません先輩、お相手の女生徒さんとは、体育館裏以外で会ってくれませんか?
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