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あの子に会うには…
僕はあの子が好きだった。
いつもあの子に会いたかった。
あの子のことはめったに見ることができなかったけれど。
あの子を見れた時、あの子は決まって僕のことを見ない。
僕があの子のことを見ている時は、あの子はいつも別の子の横で笑っている。
僕はあの子に会いたくて、あの子に僕を見てほしくて、あの子に声をかけたくて、かけてもらいたくて。
あの子に会えない日が続くと、僕はあの子に会おうとして。
どうしたらあの子に見てもらえるか、笑いかけてもらえるか。
僕はいつもいつも考えてて。
どうしたらあの子に会えるか分かった時、どうしたらあの子に笑いかけて見てもらえるかも分かった。
今日、これから、僕はあの子に会いに行く。今度こそ、僕はあの子に見てもらえるんだ。
そう考えると、僕はとても嬉しくて嬉しくて…軽い足取りであの子のもとへ声をかけながら歩いた。
「こんにちは」
あの子は僕に気付いた。気付いてくれた!
『いらっしゃい』
あの子は僕に向かって笑いかける。僕に!僕は嬉しかった。
すごく嬉しかった。だから、少し足をもつれさせそうになりながらも、僕はしっかりとした足取りで歩いた。
――そして、あの子が待つ屋上フェンスの向こうへと跳んだ。
あの子は、落ちた僕の意識がなくなる直前まで笑っていた。
僕は幸せだった。
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