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学校の幽霊は
「ウチの学校、幽霊が出るんだって」
机に突っ伏していたら、近くにいた人達が、そんな噂話をしていた。私は突っ伏したまま聞き耳を立てる。
「幽霊?マジで?」
「マジ。なんでも、先月死んだ生徒の霊らしいよ」
「それって、うちのクラスの…」
「おい、やめろよ…」
先月死んだクラスメート。そんなのは、一人しかいない。
噂話をしていたクラスメート達は、次々に口をつぐむ。さすがに元クラスメートの名前は言いたくないんだろう。
そういう点では、まだ良心は残っているみたいだ。ほんの一欠片ほど。
「…と、とにかくね。その幽霊は、普通に学校生活を送っているみたいなの」
「幽霊なのに?」
「うん。怖いでしょ?」
…肝試しみたいな感覚で話されちゃ、その元クラスメートも浮かばれないね。
ずっと突っ伏したまま聞いていたけれど、その後はただの怖い話大会になっていった。
教室移動中も、またあの話が聞こえた。
「この学校、幽霊が普通にクラスにいるんだって」
「怖いね。どこのクラス?」
「隣のクラス。ほら、そこの今移動してるクラスだよ」
そう言いながらこちらを指差してくる人達。私のクラスは一躍有名になったらしく、後で通った上学年の先輩達も同じ話をしていた。
確かに、見えないはずなのに普通に自分達と紛れているというのは、とても怖いものなのかもしれない。私は席に着いて、そんなことを考えながら先生を待っていた。
隣に座った人達が、またその話をしているのが聞こえて、私はちょっと顔をしかめた。ただ顔をしかめただけで、何かを言ったわけじゃないので、その人達は私を気にすることもなく会話を続けていた。
「この学校にさ…」
どうやらこの学校はこの噂で持ち切りのようだ。授業中だろうと昼休みだろうと、同じ話が飛び交っている。
私はいつも突っ伏した状態のまま、その話をずっと聞いていた。このクラスは当事者に近いからか、特に話題とされている。他クラスの子が聞きに来るのはもちろん、クラス内で情報交換みたいなことも起きている。
あー、うるさいなぁ。
いつまで同じ話をしているんだろう。
当事者でもないくせに。
当事者は、私達なのに。
「…あっ、また遅刻だね」
あぁ、来た。
「遅いよー。皆、もうお昼食べ終わってるよ」
「荷物置いてきなよ」
昼休みにようやく登校してきた、その子。私は席を立つ。
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