先輩のお付き合い

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先輩のお付き合い

 回る。ただひたすら、回る。  それ、はクルクルと回って、回って、回っては、幾度も俺の前を通り過ぎる。  それ、が回るのを止めることはできない。誰にも…ではないが、少なくとも俺には止められない。  それ、とは…――。  寿司。 「…いくら金がないからって、回転寿司は安いんじゃ…?」 「うるさいわね。どこでもいいって言ったのはアンタでしょうが」 「分かってますよーっと」  今俺は、学校の先輩と一緒に、回転寿司に来ている。無論、会話で察せる通り、先輩の奢りだ。 「遠慮なく食べてることだし、今更あの約束を無効にするなんて言い出したら、アンタを寿司のネタにしてあげるから」 「分かってますってば!」  さらりと恐ろしいこと言うんだからこの先輩は。  ちなみに約束ってのは…。 「お願いだから私の恋人の事は誰にも言わないでね!」  安定の色恋沙汰だよめんどくさい。もともと口止めもいらないくらいだったけど…飯を奢ってくれると言うから。  ちなみにこの先輩、成績優秀、眉目秀麗、スポーツ万能…で俺達下級生や他校生の間でも、才色兼備で有名な人だ。口はほんのちょっと悪いけど。  もちろん、やましいこともない人だし、先生や全生徒からの信頼もかなり厚い。  そんな先輩が何故こんな色恋沙汰ごときで口止めなんかするのかというと…。 「言いませんって。先輩に恋人がいるとか、ましてやそれが女生徒だなんて」 「いっ、いい今言ったぁ!」 「今のはしょうがないでしょう!不可抗力ですよ」  嘘です。意図的でした。  そんな俺の心の声が聞こえない先輩は「そ、そう…」と納得し気味だ。 「まあ、回転寿司と言えども、最近のは色んなものがありますからね」  そう言いながら注文のタッチパネルを押す。俺が注文したのは、きつねうどん。 「回転寿司に来てうどんもどうかと思いますけど、今日は先輩の奢りですもんねー?」 「………好きにしなさい」  その言葉に遠慮なく、サイドメニュー(通常の寿司より値段が高いやつ)達を注文する俺。デザートを注文し始めた辺りで先輩の眉間にシワが寄り出したので、デザートは二種類で止めとくことにした。
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