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「……少しなら……弾けます」
唯一の娯楽だったから。
お姉ちゃんがいなくなって、お母さんが伏せちゃって、私が家のことをしなくちゃいけなくて。
そんな中、心の拠り所となっていた、ピアノ。
「そうか」
マスターは嬉しそうに微笑んだ。
私はその時見てしまった。
部屋のドアが少し開いてるのを。
マリオネットが――こちらを覗いているのを。
「――!」
目が合った……気がした。
ドアは音を立てずに閉まった。
「さあ、サン。君のピアノの音色を聞かせてくれ」
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