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どのくらい黙っていたのだろうか。
数十分くらいのような気もするが、実際には数分くらいだったのだろう。
マスターは口を開いた。
「わからなかったんだ」
ポツリと、乾いた声で。
「イブがどうしたら僕だけを見てくれるか、イブがどうしたら僕の元から離れないか」
棺の中に入っているお姉ちゃんに、ガラス越しに抱きつく。
「ただ、彼女の温もりをずっと傍で感じてたかった。それだけだった」
ぽた
ぽた
マスターの目からは涙が溢れてきていた。
「もう、彼女の温もりを感じることは出来ないけど。そこまで追い詰めたのは僕かもしれない。でも、彼女は……自らの手で自らの命を絶ったんだ」
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