それぞれのさよなら―Ⅲ―

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裸足だから、足の裏が酷く痛い。 でも、速度を緩めてはいけない。 救急車を呼ばなきゃ。 救急車を呼ばなきゃ、サンが死んでしまう。 もしかしたら、もう―― 不吉な予想をしてしまう。 駄目だ駄目だ! サンは生きてる。 私が助けを呼ばなければ死んでしまうけど、きっと生きてる。 マスターだって、きっと出来る限りの手当てを……してはいない、か。 サンの体から勢い良く包丁を引き抜いた人間が手当てをするとは思えない。 そう考えると涙が出てきた。 考えれば考えるほど、サンがもう生きていない気がしてくる。
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