それぞれのさよなら―Ⅲ―

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例えサンが死んでしまったとしても―― いや、サンは死んでない! 暗い中、独りで走ってると気がおかしくなりそうだ。 ……とっくにおかしくなっているが。 自分の名前も忘れた。 年齢もわからない。 微かに残っている記憶は、親に売られてマスターの元に来たということと、マスターと共に過ごした日々のことだけ。 嫌な思い出しかない。 何も考えたくないし考えれない。 何か考えたら壊れてしまう。 そう思って心を閉ざした私に、サンはずっと優しくしてくれた。
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