それぞれのさよなら―Ⅲ―

10/10
前へ
/20ページ
次へ
泣いたって仕方がないとわかっているが、涙が出てくる。 まあ、普通、こんな真夜中にこんな山道を1人で歩いている女などいないだろう。 もし気付いたとしても幽霊だと思われたかもしれない。 嘆いていても仕方がない。 歩かないと……。 歩かないといけないのに……体から力が抜けて……。 もう、手にも力が入らない。 私は滑り落ちるように地面に倒れ込んだ。 体がどこも動かない。 それどころか……瞼も重くなってきた。 ……そのまま私は気を失ってしまった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加