それぞれの行方

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……答えられない。 「その、忘れてしまって……わからないです、自分の名前」 『自分の名前を忘れた』 おそらく、普通の世界ではあまり起こり得ない状況だろうから、口にするのが少し嫌だった。 医師は一瞬驚いた表情を見せたが、続けて言った。 「体調は大丈夫ですか?どこか痛いとことか……」 「はい」 嘘。 本当は全身ダルいし、痛い。 少なくとも命に別状のある状態ではないだろうからわざわざ言う必要はない。 「警察の方がいらしてるんですが、お話出来ますか?体調が優れないようでしたら後日改めて来てもらった方がよろしいと思いますが……」
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