ジェイク・ルーニーの章

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それから数日たったある日。 「それにしても、この間の若い兵士……確かルイスと言ったか。大臣を黙らせたらしいな」 「がははは! あれは良かった。奴は早くに両親を亡くして、あの年で幼い弟を一人で育てている中々の男でな。 真面目で腕も立つ。あと五年もすればきっと大物になるぞ」 ムーアの前でジェイクはいつにも増して上機嫌であった。 この時までは……。 「オヤジ!!」 遠くで聞こえるその声に、うるさいのが来たな。ジェイクはそう思った。 『オヤジ』と呼ぶ者は、副長のマウロ・ペタ以外にはいない。勿論息子ではないのだが、そう呼ばれる事も満更ではなさそうだ。 「大変だオヤジ!」 間もなくして、綺麗に切り揃えられた口髭に色白で華奢な身体の男が、血相を変え現れた。 「何事だ騒々しい」とジェイクの後に、マウロが信じられない言葉を発した。 「ルイスが殺された!!」 それは、そこにいた誰もを凍りつかせた。
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