15人が本棚に入れています
本棚に追加
それから数日たったある日。
「それにしても、この間の若い兵士……確かルイスと言ったか。大臣を黙らせたらしいな」
「がははは! あれは良かった。奴は早くに両親を亡くして、あの年で幼い弟を一人で育てている中々の男でな。
真面目で腕も立つ。あと五年もすればきっと大物になるぞ」
ムーアの前でジェイクはいつにも増して上機嫌であった。
この時までは……。
「オヤジ!!」
遠くで聞こえるその声に、うるさいのが来たな。ジェイクはそう思った。
『オヤジ』と呼ぶ者は、副長のマウロ・ペタ以外にはいない。勿論息子ではないのだが、そう呼ばれる事も満更ではなさそうだ。
「大変だオヤジ!」
間もなくして、綺麗に切り揃えられた口髭に色白で華奢な身体の男が、血相を変え現れた。
「何事だ騒々しい」とジェイクの後に、マウロが信じられない言葉を発した。
「ルイスが殺された!!」
それは、そこにいた誰もを凍りつかせた。
最初のコメントを投稿しよう!