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「しっ。今二人の邪魔をしたら殺されかねませんよ」
始終二人の勝負を見ていた中年の女中頭が、その若い兵士を引き止めると、先程の慌て振りから一転、兵士は落ち着いた様子でその女中頭にお辞儀をする。
「して、マーサ殿。お二人は一体何をしてらっしゃるのですか??」
槍と剣を構えたまま、微動だにしない二人の将軍の姿を見つめ、兵士は首を傾げた。
「これです」
女中頭マーサが手に持つトレンチには、薄く色着された水が注がれた二つの硝子の器があった。
「何ですかこれは?」
「氷菓子でした。先程までは」
「先程まで氷菓子?」
「これを、どちらが食べるか勝負のようですよ」
「二つあるのだから、それぞれ……」
「まあそれは建前で、何か理由をつけて勝負をしたいのでしょう」
マーサが微笑ましく二人を見つめながら、良い歳にも関わらず浮いた話の一つもない二人をついつい心配してしまう。
「しかし、勿体ない。貴重な氷を溶かしてしまうなんて」
若い兵士がボソリと呟く。
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