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それなのにお母さんは。 あれもこれも我慢してきた。 痛いのも。 寂しいのも。 苦しいのも。 切ないのも。 悲しいのも。 怖いのも。 全部、全部我慢してきたのに。 「なのに、なのにお母さんは」 僕を、裏切った。 いや、本人は裏切ったという感覚すらないだろう。 だって、最初から僕を物扱いしていたのだから。 要らなくなった物を、邪魔な物を捨てただけなのだから。 「可哀想に……ずっと堪えてきたのね」 水谷さんは腕を伸ばして僕の頭の上に手を置いてきた。
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