理想と現実

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上級生の集団が怖かった私は陰から隠れてそれを見ていた。 お姉ちゃんは泣きながら文句を言っていたが、何を言っていたか詳しくは覚えていない。 私が幼かったのもあるし、私がお姉ちゃんのクラスの状況を知らなかったのもあるだろう。 それでも、散々髪を引っ張られたり叩かれたりしていたのに、自分に危害を加えるのをやめるように言っているのではなく、誰かを庇うようなことを言っていたのは覚えている。 私はその女の子集団が去っていってもお姉ちゃんに声をかけられなかった。 何を言って良いのか分からなかったから。 お姉ちゃんは泣いていたが、廊下の端から来た人を見て笑顔になった。 でも、その人はお姉ちゃんを見るなり怯えたような表情になり走り去ってしまった。 お姉ちゃんはその時初めて悲しそうな顔をした。 さっきまでは泣いてたけど、顔つきはしっかりしていたのに。
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