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第1話
『午後17時33分です、ピーッ。もしもーし、唯っ?部活中にいきなり電話してごめんなっ。…えっとー明日って空いてる?俺、唯に見せたい物があるんだ、明日で付き合って二年目だろ?そのお祝いとして俺からのプレゼントを受け取ってほしいんだ。部活終わったらメール送っといて・・・・・・ツー、ツー、ツー』
録音メッセージが終わった。これが藤村凌太からの最後の声だった。
私は未だに何回もこのメッセージを聞いてる、毎朝、この桜の木の下で。
「唯ーっ!またこんなところにいたの?!もういい加減忘れなよぉ~」
後ろを振り返ると、倉木美奈がいた。いつもの待ち合わせ場所から走ってここに来たっぽく息が荒い。彼女は小学校からの付き合いで私の親友だ。
「忘れたいんだけど、やっぱり忘れられないなー。美奈、また寝坊したでしょ」
と笑いながら言った。美奈はそれを見透かされたような顔をしている。
「い、一分遅れただけで先に行く唯はひどいよぉ~、でっ、いつもここにいるよねっ」
美奈は怒ってるのか笑ってるのか私にはわからないまま言っている。
「なんかどうしてもここに来たくなるんだよ、凌太が待ってるような感じがするの。」
美奈は「なんだそりゃ」と苦笑した。学校のチャイムが鳴った。授業が始まる予鈴だ。
「あっ予鈴だ、教室行こっ………そういえばさ、もう一回聞くけど藤村のどこが好きなの?唯のことほったらかしにしてどっかに消えちゃってさ、何回電話しても出てこないんでしょ?っていうかまだ好きなの?」
美奈が言った、でも私には凌太のことがどうとかよく分からなかった。なんで付き合ったのか、どうして凌太は私のことを好きになったのか、ずっと分からないままだ。
「なんで付き合ってたんだろうね」
私は笑いながら言った。この返事しかなかった。ちゃんとした返事で返すことができなかった。美奈は「ふ~ん」と言いながら空を見てた。そして教室に向かった。
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