大クリスマス会の夜

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「もしもし」 「よぉ、メール見たぜ。またくだらないことやってんなぁ…!」 「へへっ……」 掛けた相手は大学時代からの友人R。 食べ始める前に部屋の様子を撮った写真をメールで送っていたのだ。 彼がいないとあの辛い寮生活は乗り切れなかった。 精神的ブレイクダウンしかけた時期も乗り越えられた。 掛け替えのない存在とのやり取りは、絶望に呑まれかけた俺の心をゆっくり掬い上げてくれた。 彼は何時ものように「ウゼェ」を連呼しながら楽しげに笑う。 彼といる時は大体俺が話役だ。 というか向こうが質問をして俺が答えるという。 基本的に聞き役同士の会話って大体こんな感じだろう。 俺は話しながらも来た道を戻って、部屋に入る。 買ってきたコーラをコップに注いだところでRがこんな質問を投げかけてきた。 「なあ、お前、どうしてそんなのやろうと思った…?」 核心を付く質問。 そんなのとは、勿論この大クリスマス会のことだ。 「さて、なんでだっけ……忘れたなぁ…」 口ではそう返しつつも内心分かっていた。 要は寂しかったのだ。 誰かと一緒にいたい。 でも、誘う勇気も無い。 だから開いたのだ、大クリスマス会を。 列席者は自分、主宰者も自分。 全てが自作自演。 そんな、狂気のパーティを。 「じゃ、、またな」 「ああ、お元気で」 そんな短いやりとりで電話を終えた俺は、ふと自分の目から雫が零れているのに気付いた。 やはり、電話してよかった。 スッキリした表情の俺の目に容赦無く飛び込んでくる現実。 目の前には名峰チーズタルトがまだ半分以上も形を残したままそこに在った。 俺は無造作に一口分フォークに取ると口の中へ放り込んだ。 チーズタルトは相変わらずの甘ったるさと、ちょっとしょっぱい味がした。
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