Chapter1 早瀬成海のエスケープ

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 不真面目で申し訳ないが、この俺、早瀬成海にとっては我が国日本の政治事情や自分自身の未来のことなんて割とどうでもよくて、ではどうでもよくないこととは何かと聞かれたら、それはノートパソコンの傍にうず高く積まれたライトノベルの塔なんかがそうである。  先ほど起動したPCゲームのロードがなかなか終わらないのに気づいた俺は、その天辺にある一冊を手にとった。ちょうど真ん中あたりにしおり代りのレシートが挟まっている。開けば、ヒロインが主人公を裏切った理由を必死で説明している場面が、活字になって現れた。つまらないラノベだ。  俺の部屋には、こういうオタクっぽいアイテムがいくつもある。ゲームに、そのサウンドトラックに、フィギュアにカード、きっと一生使わないであろう、キャラの描かれたクリアファイルやコースター類──  俺はオタクで、ついでに高校を中退した引きこもりでもあった。
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