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「君は一体なにものだい?」
コツコツ、とつつかれる。
「食べ物でないことはわかるよ。でも、なんたってそんな旨そうなにおいなんだ?」
ボクには答えようがなかった。ただ、ここじゃないということだけは知っている。
ボクのあるべき所はここじゃないんです。
「ふうん。よくわからないけど、そっか。で、それってどこのことなの?」
それがボクにもわからなくて……。
「それじゃダメだね」
コツコツ、またつつかれる。
「行くあてがないんだったら、ウチに来ない? 君、おもしろいから大歓迎だよ?」
ボクはちょっと考えてみる。ちょっと考えて、尋ねてみる。
あなたは誰です?
「おいら? 人間からはカラスって呼ばれてる」
カラス?
「そう、真っ黒鳥のカラス。君は……たぶん、たぶんだけど、ボタンって呼ばれてたりしない?」
ボタン?
「人間の裸を隠す道具の服ってのにくっついていて、ボタンは服の開け閉めをするためのものだよ」
フク? ……ボタン?
「服をボタンで開けると、素の人間が出てくるってわけさ。ま、そんなことどーだっていいけどね。おいでよ」
カラスがボクを持ち上げる。
ふわりと地面から飛び上がり、ボクはすぐに放り投げられた。
「ギャッ」
悲鳴が上がって、慌て羽ばたく音。バサバサ。
どうやらカラスは行ってしまったようだ。
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