ボタン

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**** 「君は一体なにものだい?」  コツコツ、とつつかれる。 「食べ物でないことはわかるよ。でも、なんたってそんな旨そうなにおいなんだ?」  ボクには答えようがなかった。ただ、ここじゃないということだけは知っている。  ボクのあるべき所はここじゃないんです。 「ふうん。よくわからないけど、そっか。で、それってどこのことなの?」  それがボクにもわからなくて……。 「それじゃダメだね」  コツコツ、またつつかれる。 「行くあてがないんだったら、ウチに来ない? 君、おもしろいから大歓迎だよ?」  ボクはちょっと考えてみる。ちょっと考えて、尋ねてみる。  あなたは誰です? 「おいら? 人間からはカラスって呼ばれてる」  カラス? 「そう、真っ黒鳥のカラス。君は……たぶん、たぶんだけど、ボタンって呼ばれてたりしない?」  ボタン? 「人間の裸を隠す道具の服ってのにくっついていて、ボタンは服の開け閉めをするためのものだよ」  フク? ……ボタン? 「服をボタンで開けると、素の人間が出てくるってわけさ。ま、そんなことどーだっていいけどね。おいでよ」  カラスがボクを持ち上げる。  ふわりと地面から飛び上がり、ボクはすぐに放り投げられた。 「ギャッ」  悲鳴が上がって、慌て羽ばたく音。バサバサ。  どうやらカラスは行ってしまったようだ。
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