ボタン

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「はっはぁ! やってやったぜぃ。どんなもんだ!」  こんにちは。 「振り切ってやったぞ! これでもう追っかけては来ないはず。やったねこれで自由だヤッホーイ!」  ボクはフクのボタンです。あなたは誰です? 「たいしたことねーの。首輪なんてつけやがってさ、リードとかゆーの引っ張りやがってよ、これじゃ意味ねーじゃん。ニンゲンのバカバカまぬけ!」  どこからか、大きな音と猫のミーちゃんのニャギャーという断末魔が聞こえてくる。  すると先程までにぎやかにしていた誰かは急に静かになって、ふんふんと辺りをうかがった。 「……ったく、あの部屋ときたら、いつまで経っても感じわりーの」  アノヘヤ? 「うわっ、なんだてめえ! いつからそこにいた?」  ボクはフクのボタン。さっきからずっとここにいました。 「あ、そう」  アノヘヤ、とはボクがおっこちてきた所のことですか? 「いや、知らねーけど……ん? ちょい待ち」  にぎやかな誰かはふんふんとボクに鼻をくっつける。 「あの部屋からくるにおいと同じにおいだな。こうなんか、身体がうずうずして、今にも飛び掛かって行きたくなるような……」  血のにおい? 「そうそれっ! うわっ、てめえ不吉だな! 近寄んじゃねえよ!」  そう言われましても……ボク、動けないですし。 「あ、そう。じゃ、オレっちが離れるとするか。あばよっ!」  にぎやかな誰かも行ってしまったようだ。  ボクはいつになったらあるべき所へ戻れるのだろう?
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