第4話

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 「大久保君、お客様!」  安心して出かけたのに、僕は今日、何度も先輩からこの言葉をかけられていた。  アゲハの留守番についてはさほど心配していない。そうじゃないことで、今、頭はいっぱいだった。 「どうした?体調悪いか?」  レジの客が引いたところで、大学の先輩でもある田所さんから声を掛けられた。 「いいえ。体調は、悪くないです…」 「まぁ、顔色は悪くないか。なんつーか、上の空って感じだな」 「すみません。しっかりします」  しっかり言い当てられて、僕は顔を上げられない。 「あぁ。頼むぞ」  はい、と返事をして、頭を振る。今は、バイト中なんだから、集中しないと。  家を出てから、いや、昨日の夜からずっと、僕の頭の中はぐるぐるとしている。  一昨日の朝、僕はアゲハに言った。  「蝶に戻れるまで、ここで暮さない?」と。  でも、まだその方法の欠片も思いついてはいない。誰かに聞いて解決する問題じゃないし、そもそも、元に戻れるのかさえ分からない。  そして、昨日思い知った。  リミットがあることを。  だから、僕は焦っていた。  そして、今日のこの不手際。    バイトをなんとか終えた僕は、喫茶店近くの雑貨屋で日傘を買った。  黒地で、生地の先にフリルのついた、アゲハに似合いそうな日傘を。  今日の休憩中に考えた方法を試すために、必要なアイテム。というか、暑さに弱いアゲハが出歩くためには、必須なアイテムだ。  急いで家に帰ると、アゲハは子供向けのアニメ番組を見て笑っていた。
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