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ことの発端は、瀬織達が、南部新総理との夕食会に呼ばれたところから始まった。
南部は、保守的な意向が強い総理だった。
瀬織達は伝説的にタブーな存在のため、厄介者として遠ざけてきた烏山とは対照的に、接触してきた。
国防に関し、裏で活動してきた防衛省 技術研究本部 対侵略研究室、通称AILの、顔ぶれを見ておきたい、という趣旨である。
内実は、何らかの役割に新たに当てるための、下見だろうと、瀬織は考えている。
瀬織、モヤシ、メガネ、ドジコ、ハカセの研究室のレギュラーに加えて、陣平も出向くことになった。
モヤシがワンボックス車で、各員宅を回り、道すがら拾いながら官邸に向かう。
夕食会ということで、女性陣はあまり華やかすぎない程度の礼装をしている。
陣平は、以前に購入した吊しの背広だが、モヤシはダブルの仕立ての良い背広を着ていた。
瀬織は、スーツを着ていた。
先に着替えてリビングにいた陣平の前に、ドジコが着替えて降りてきた。
落ち着いたツーピースを、着ていた。
「えへ」
ドジコは陣平を見た。
陣平は、最近特に、ドジコが大人っぽくなってきたように感じていたこともあり、
「ドジコは最近、ほんと大人っぽいなあ。
俺はガキんちょだから、なんか気遅れしちゃうよ。」
と、感想を述べた。
途中で、瀬織宅のとなりのマンションの出口で、ハカセとメガネを拾う。
クルマに乗ってきたハカセは、やや派手めのワンピースだった。髪をアップにまとめている。
元々、ヨーロッパのゲルド国と、日本のハーフで、はっきりした顔立ちの美女の土台を持っているが、このような出で立ちをすると、際立つものがある。
普段は、白衣ばかり着ているハカセだったので、なおさら陣平は、新鮮さを感じた。
「うわ、ハカセ…きれ…見違えたな。」
ハカセは、シートに座ると、フフンと鼻を鳴らした。
「はっきり、キレイだと言っていいぞ?
結婚してくれと、泣いて頼みたくなったか? 」
「いや、ソコまでは。」
「なんだ。つまらない男だ。」
ハカセや瀬織は、場慣れしているので、余裕があるが、陣平やドジコは、緊張している。
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