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陣平は、頭を下げた。
南部は、陣平を、ふーむ、と、眺めた。
「まだ子供の年齢なのに、すまんな。いろいろ大変だろう?」
「いえ、そんなことは…」
そんなことはある、と言いたかったが、陣平は言葉を濁した。
パーティーが始まり、南部を囲む形で、話しをしていた。
若干の酒が入ったせいか、元々なのか、南部は、話しにエンジンがかかった。
「君たち、ネット右翼は、知っているな?」
目が陣平に向いていたので、陣平は、
「あ、はい。定義は、インターネットの中を主な活動の場とする右翼思想の人達、でしたか?」
南部は、グラスを掲げた。
「いかんな、模範的だ。面白くない。
飲んでないからだな。
高校生なんだろう?
私が高校のときは、しょっちゅう隠れて飲んだものだ。酒を。」
瀬織が、
「家では、たまに隠れて飲んでます。
私の1本13万円のブランデーを、無断でそこのドジコと空けて…」
と、告げ口した。
ドジコも、陣平も、瀬織がブランデーを飲まれたのを実は、根に持っていたのではないかと疑った。
それ以上話されると、そのあと悪酔いしたドジコの嘔吐物を陣平が飲んで、変態趣味であると断定され、コードネームが変態のヘンタになった、というところまでばらされかねないので、陣平は、遮った。
「で、そのネット右翼が、いかがしましたか?」
南部は、おっと、と、話を戻す。
「そのネット右翼、どんな人間達だと思う?」
陣平は、ネットにアクセスするのは、今は一般的だと認識している。
「一般の人でしょう。あるいは、一部の人達は、何らかの意図で恣意的に過激な発言をする雇われ人などもいるようですが。」
「ん、少し面白くなってきたな。
そうだね。今は国民の何割かがネット右翼とみていい。それは、少なくない割合だ。」
(それはどうなんだ?)
陣平は、腹の中では、やや信じがたい。
南部は、グラスを空けた。
「政治家は、世論に影響を受ける。
世論のための存在、と言ってもいい。
では、世論を操作しているのは何だろう?
そうだな、今度は、陣平君の奥さんの意見が聞いてみたい。」
ドジコに意見を求めてきた。
ドジコは、心臓に負担が来た。
「あの、たぶん、私が思うには、教育とか、あとは世間の井戸端会議みたいな繋がりが造る雰囲気?ですか。」
南部は、うれしそうだった。
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