1・夕食会

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米本は、話しを、続けた。 「仙手、今は、魂仙手と呼ぶのかしら? 中丹国で開発されている量産可能な魂仙手使いに対し、こちらの戦力は充分だとアピールする必要がある。 そこで、領海侵犯して浸入する中丹国の艦船の対応に、参加してもらう案が出ています。」 瀬織は、首をひねる。 「そんなやり方では、戦争になるのでは?」 「もう、やられてます。小銃で撃たれている。こちらは専守防衛のみでね。」 瀬織はさすがに衝撃を受けた。 「そこまで悪化していたとは…」 「まだ、艦砲やミサイル沙汰には至ってない今、やっておく必要がある。」 陣平は、身震いした。 いよいよ、予言にある実戦に入っていく時期がきたかと、腹を決めた。 南部は、重くなった空気を払うように、笑った。 「ま、そう、重く考えなくて良い。 出動は、2、3回で充分効果があるだろう。」 それは楽観視過ぎると、瀬織は思うが、今は、言わなかった。 夕食会の終盤、会話が散漫になった頃、ハカセは、思い出したように、瀬織に報告した。 「ああ、陣平や、アネサンが、自分の体重以上の安定感がある理屈、あれ、推定できるデータがとれたぞ。」 陣平と瀬織は、身を乗り出した。 富士の演習場での疑問に対し、陣平は先日、ハカセの測定に協力していた。その結果ということだ。 ハカセは、手振りを入れながら説明した。 「周りの空間に、自分を固定する信号を出して、固定するという事実を創ってる。」 陣平は、眉を潜めた。 「わかりにくい。」 「あ、すまん。陣平にもわかるように言う。例えば、シズカの刀は、切れるという信号を刀の形にして発信している。 だから、刃がない気の刀でも、切れる。 実際、竹刀に気を通して、鉄入りの面を切ったろう? それと同じように、周りに、自分はびくともしないという信号を360度に発している。常時、全天に発しているのだから、刀だけに信号を出しているシズカに比べたら、エネルギー効率は悪い。」 「だから、疲れやすいのか。俺。」 「特に陣平は、蹴る殴るの接近攻撃が一番強いタイプだからな。 それ無しでは、攻撃が成り立たない。」 ハカセは、つんとした鼻先を親指でこすった。
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