10人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
米本は、話しを、続けた。
「仙手、今は、魂仙手と呼ぶのかしら?
中丹国で開発されている量産可能な魂仙手使いに対し、こちらの戦力は充分だとアピールする必要がある。
そこで、領海侵犯して浸入する中丹国の艦船の対応に、参加してもらう案が出ています。」
瀬織は、首をひねる。
「そんなやり方では、戦争になるのでは?」
「もう、やられてます。小銃で撃たれている。こちらは専守防衛のみでね。」
瀬織はさすがに衝撃を受けた。
「そこまで悪化していたとは…」
「まだ、艦砲やミサイル沙汰には至ってない今、やっておく必要がある。」
陣平は、身震いした。
いよいよ、予言にある実戦に入っていく時期がきたかと、腹を決めた。
南部は、重くなった空気を払うように、笑った。
「ま、そう、重く考えなくて良い。
出動は、2、3回で充分効果があるだろう。」
それは楽観視過ぎると、瀬織は思うが、今は、言わなかった。
夕食会の終盤、会話が散漫になった頃、ハカセは、思い出したように、瀬織に報告した。
「ああ、陣平や、アネサンが、自分の体重以上の安定感がある理屈、あれ、推定できるデータがとれたぞ。」
陣平と瀬織は、身を乗り出した。
富士の演習場での疑問に対し、陣平は先日、ハカセの測定に協力していた。その結果ということだ。
ハカセは、手振りを入れながら説明した。
「周りの空間に、自分を固定する信号を出して、固定するという事実を創ってる。」
陣平は、眉を潜めた。
「わかりにくい。」
「あ、すまん。陣平にもわかるように言う。例えば、シズカの刀は、切れるという信号を刀の形にして発信している。
だから、刃がない気の刀でも、切れる。
実際、竹刀に気を通して、鉄入りの面を切ったろう?
それと同じように、周りに、自分はびくともしないという信号を360度に発している。常時、全天に発しているのだから、刀だけに信号を出しているシズカに比べたら、エネルギー効率は悪い。」
「だから、疲れやすいのか。俺。」
「特に陣平は、蹴る殴るの接近攻撃が一番強いタイプだからな。
それ無しでは、攻撃が成り立たない。」
ハカセは、つんとした鼻先を親指でこすった。
最初のコメントを投稿しよう!