知ってる

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「なる、少し落ち着け」 社長は笑いながらそう言った。 …それはムリです。胸がいっぱいで、込み上げてくるものが半端じゃない。 そんな私の気持ちを知らない社長は、荷物を中へ入れて、社長室のドアを閉めた。 …何か、何か話さなきゃ! 「社長、…あの、何か飲み物お持ちしますか?」 すると社長は、私の顔を見て、続けて自分の腕時計を見た。 「なる。今何時だと思ってるんだ?」 あ…、なんだか社長がお怒りモードになってる。 やっぱり、いけなかった…? 「もう9時になる。…まさか、いつもこんな時間まで残ってたんじゃないだろうな?」 「ち、違います!…いつもはもっとはやく帰ってました」 慌て首を降って訂正した。 「ただ、…今日は……」 また、言葉に詰まる私。 「……なんだ?」 社長が私の返事を待ってる。 本当は、ちゃんと伝えたいことを考えていたのに…。 あれもこれもって、話したいことがたくさんあるのに…。 いざ、本人を前にすると、こんなにもためらってしまう自分。 なんて弱いメンタルなんだろう…。
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